歯周病菌が大腸がんの原因?「フソバクテリア門とは?」口腔内フローラが腸内フローラに与える影響
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大腸内視鏡検査の専門ナースとして働いていたころ、気になる事がありました。
「大腸がんの臭い」
です。
検査中に進行した大腸がんが見つかると、内視鏡の鉗子口(鉗子を通す管)を伝わって独特な臭いがします。
「この臭いってなんなんだろう?これががんの臭いというものか?」
ある臭いと同じ気がしてなりませんでしたが、その根拠が分からなかったのでずっと気になっていたんです。
腸内細菌と大腸の病気を勉強するにつれて様々なことが分かりました。
そのひとつが「大腸がんに関係する臭い」について。
大腸がんが発生する腸の中にはある菌が生息します。
普通の人の腸にはあまり存在しない菌です。
その菌は口の中にいる菌。
歯周病の原因となる菌と同じ「フソバクテリア」という菌です。
増え続ける大腸がん。
そして歯周病大国日本。
この2つの因果関係がどんどん分かってきました。
本日は・・・大腸がんを防ぐために学びたい腸内細菌についてふれてみましょう。
歯周病菌が大腸がんの原因?「フソバクテリア門とは?」口腔内フローラが腸内フローラに与える影響
がんと腸内フローラ
腸内細菌を研究する医療チームは、大腸がんの患者さんの便に含まれる腸内細菌を調べることにより、大腸粘膜内がんのような初期段階の大腸がんを見つけることが可能になったということを発表しました。
これは大腸がんの早期発見と共に、がんを発症しやすい腸内環境を改善することにより、「がん予防」が可能になるということを示唆しています。
様々な病気において健康な人と比べると、その腸内細菌叢の構成が異なっていることが解ってきました。
過敏性腸炎、非アルコール性脂肪肝、糖尿病、肥満、認知症などが報告されています。
その中で特に注目されているのが腸内細菌「フソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)」と大腸がんの関係です。
フソバクテリウムとは、以前より歯周病の発症に関係することが指摘されていましたが、新たに潰瘍性大腸炎の発症や悪化に関係しているのではないかと注目されていました。
さらに今回、大腸がんの組織からかなり大量のフソバクテリウムが検出され、大腸がんの原因としてもクローズアップされるようになりました。
歯周病と腸管免疫について
国立がん研究センターの研究
国立がん研究センターより発表された研究では、大腸検査を受けた616人が対象に行われました。
研究内容は、便の分析のほか、大腸内視鏡検査データーの解析、さらに食生活アンケート調査によるものです。
その結果、がんの発症から進行にいたる過程によって増減する腸内細菌の種類が大きく異なることが判明しました。
大腸がん発がんの過程で関係する細菌パターンは2種類にまとめられます。
◆粘膜内がん初期から増加し、がんの進行と共に増える細菌
フソバクテリウム、ペプトストレスプトコッカスなど進行大腸がんで増えていることが報告されている細菌です。
◆多発性ポリープや粘膜内がんの初期に増える細菌
アトポビウムやアクチノマイセスなどが特定され、大腸がんの発症初期に関連することが解っています。
増えている菌は上記の分類ですが、減少している菌もあります。
ビフィズス菌は初期である粘膜内がんの段階から減少しています。これはがんの進行度と腸内細菌との間に様々な関連性があることを示しています。
横浜市立大学の研究
横浜市立大学は、大腸がん患者さんのがん組織と唾液に共通した菌株が存在していることを発見したと発表しました。
この発表は、口腔内のフソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)腸内細菌が大腸がんに関係していることを示しています。
フソバクテリウムは、大腸がん患者さん以外でも多くの人が口腔内に持っている常在菌の一種で歯周病を悪化させることも解っています。
今回の研究では、直近に抗生剤使用歴が無いないなどの条件で選抜された14名の患者さんが対象になりました。
その結果、患者さん8名において大腸がん組織と唾液の両方から「フソバクテリウム」が検出されました。8名のうち6名の患者さんの大腸がん組織と唾液におけるフソバクテリウムの菌株が一致したそうです。
このことから、口腔内のフソバクテリウムが大腸がん組織に移行し感染していることが示されたといえます。
大腸がんを予防するには歯周病を防ぐこと、腸内細菌叢を改善すること
これらの研究から大腸がんを予防するためには、歯周病を防ぐことが大切だということは明らかです。
またそれに併せて「シンバイオティクス」による腸内細菌叢の改善も疾病予防に注目を集めています。
昨年の研究によると、腸内に有用とされるシンバイオティクス療法(有用細菌とエサを同時投与する療法)は、大手術の術前合併症を減らすことが報告されています。Crit Care 2018; 22: 239
シンバイオティクス投与後1週間後の便中総菌数は著しく増加、投与した菌株だけでなく腸内細菌叢全体が増えていました。
腸のバリア機能(タイトジャンクション保持作用)の改善から、全身への炎症を抑制する酢酸も急増。下痢の発生率は6%(投与していない群は27%)、人工呼吸器関連肺炎は14%(非投与は46%)と感染性合併症は明らかに減少しました。
シンバイオティクスによる腸内細菌叢と腸内環境の改善は、大腸内の疾病予防と共に全身の健康保持に有効だということが明らかになってきたわけです。
大腸がん患者さんの臭いは嫌気性菌である「フソバクテリウム」の臭い。
これで符に落ちました。
口の中の菌が腸にがんを発生させるなんて・・・今までは解らないことでしたね。
歯周病予防、皆様も頑張って下さいね!
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NRサプリメントアドバイザー
胃腸良子